ご葬儀の一コマ ー伝えたいことー

20数年前、葬儀司会を始めた頃でしたか、先輩からこんな話を聴きました。

「人ってね、意識がないように見えても、耳だけは最後まで聴こえてるらしいよ」

その時、ああ、と思いました。
祖父が亡くなった時、もう心肺停止で、医師が心臓マッサージを必死にしているさなか、家族はみんなで口々にもの言わぬ祖父に呼びかけました。すると、祖父の閉じられた瞼から、涙がつーっと流れました。そのあとすぐ、祖父は息を引き取りました。

今日のご葬儀で、ご遺族が同じようなことをおっしゃったのです。
お母様の心電図が、動かない1本の線となった時、娘さんはお母様の手を握り「ありがとうね」と涙声で伝えました。すると、握られた手が一瞬だけ動き、瞼から涙が一筋伝ったと。

ご葬儀で、最期のお別れの時、私はご遺族に、
「お耳は最後まで聴こえている、と言われてます。どうぞ、話しかけてあげてください」

と言うようにしています。

もう納棺されているのだからさすがにそれはないだろう、という人もいます。が、本当のところは誰にもわかりません。もしかしたら聴こえているのかもしれません。
だとしたら、伝えてあげて欲しいのです。
感謝を、ねぎらいを、そして愛を。